夏のプールサイドを思わせるコンテンポラリーサウンド Carl Anderson / Fantasy Hotel

2004年に白血病により他界したアダルトコンテンポラリー系シンガー、カール・アンダーソン。タバコ銘柄「パーラメント」のCMソングとして起用された楽曲「Pieces Of A Heart」で彼の歌声を耳にした方も多いのではないでしょうか。甘すぎず、べたつかず。かと言って硬派過ぎないジェントルな歌声。聴く者の心に直球で入ってくるような癖の無い唱法は、彼の音楽キャリアのスタート地点がミュージカルだったことに由来しているかもしれません。(「ジーザス・クライスト・スーパースター」のユダ役として映画にも出演してるんですよ。)サラ・ブライトマンもそうであるように、ミュージカルからソロへ転身したシンガーは、確かな力量と、間口の広い唱法を持った歌手が多いように思えます。

さて、そんなカール・アンダーソンがジャズ/フュージョンの名門レーベル「GRP」よりリリースした作品は3枚。世間的にはパーラメントCM曲が収録されている90年リリースの「Pieces Of A Heart」が有名ですが、本日紹介する92年リリースの「Fantasy Hotel」も負けず劣らずの出来栄え。夏のリゾートホテルのプールサイドを思わせる洗練された雰囲気漂う、コンテンポラリーミュージックの秀作です。

収録曲は全10曲。内5曲がThe Rippingtonsのリーダー:ラス・フリーマンによるプロデュース。4曲が元ルーファスのドラマー:アンドレ・フィッシャーによるもの。残り1つがカール自らのプロデュースとなっております。ラスフリーマンが手掛けた楽曲は、ややデジタルなフュージョンタッチのサウンドでカールの歌声を含め曲全体で聴かせるような作りなのに対し、アンドレ・フィッシャーの楽曲はカールの歌声に焦点を当てたサウンドとなっているのが印象的。

参加ミュージシャンは、ラス・フリーマン、デイビッド・フォスター、ネーザン・イースト、ジェラルド・アルブライト、アルフォンソ・ジョンソンなど西海岸で活躍する腕利きばかり。ラスがプロデュースしている楽曲ではThe Rippingtonsからトニー・モラレス、マーク・ポートマンの2名が参加しています。

オープニングナンバー「I Will Be There」はクリスタルのような透明感溢れるミディアムチューンで、ギターの深いリバーブが都会的。「If Not For Love」はデイビッド・フォスター作曲のジャズバラード。カールの包容力たっぷりで切実な歌声に圧倒される。ケニー・ロギンスのヒット曲「Love will Follow」はラスによるプロデュースで妖艶な雰囲気の原曲より、軽いタッチになっているのが面白い。フュージョン的な「All I Wanna Do」や、80年代を彷彿させるシリアスなサウンドの「I’m No Stranger」も良い感じ。

全編を通して深いリバーブがかかった、演出過多ぎみなサウンドメイクですが、それが当時の時代性なのでしょう。現在聴いてもなかなか味わい深くロマンチックに響きます。アダルトコンテンポラリーの定石が散りばめられた秀作。是非聴いてみてくださいね♪