俺のベースを聞け!Al Turnerの「Movin’」

音楽においてベースギターという楽器はドラムと共に楽曲のリズム面を担うパートですが、どうも地味な印象をもたれることが多いですよね。

例えば、バンドのライブにて。大げさな身振りをしながら観客の視線を集めるボーカリスト。「ちっ。あいつまた音はずしてるよ」などと思いながら自分(ベース)は黙々とルート弾き。ギターソロ中も「また同じフレーズじゃん。金太郎飴か。」と思いながら黙々とルート弾き。目立てる場所といえばサビ前の2拍ほど。それもほとんど誰も聞いていない。

ピーター・セテラのようにベースとボーカルを兼任する人も稀にいますが、実際のところシカゴの楽曲を聞く際に、彼のボーカルではなくベースの方に注目している方っているのでしょうか。

「もっと俺のベースを聞け~~!」そんなベーシストの叫びを実現させてしまったのが、本日紹介するアルバムAl Turnerの「Movin’」です。

Impression

Al Turnerはスムースジャズ界で有名な「ファースト・コール」なセッションベースマン。アール・クルーやボブ・ジェームスといったこのジャンルの重鎮たちのレコーデングやツアーに多数参加している知る人ぞ知るベースプレーヤ―なのです。このアルバム「Movin’」は彼が2008年にリリースしたセカンドソロアルバム。

ベース・オーケストレーションとまではいきませんが、主旋律を奏でているのは、ギターでも無く、ピアノでも無く、ベース。コーラス(サビ)の部分でたまに、ユニゾンで管楽器が入ってきたりしますが基本はずっとベース。もちろんベースという楽器の本来の目的であるリズムパートも担っておりますので、ベースの2重奏とも言えます。

普通の音楽ファンなら卒倒してしまいそうな、ベース・オリエンティドな作品でありますが、楽曲自体はキャッチ―で耳なじみの良いスムースジャズでございます。

ただ通常のスムースジャズと大きく異なる点は、ソロイスト(ここでは当然ベーシスト)の自己主張が激しいところ。スムースジャズの作品はソロ名義であれ、どこか控えめで客演との調和のなかでサラりと聞かせるタイプのアルバムが多いのですが、この作品はまさに「俺のベースを聞け~~~!」状態。もう、あらゆるテクニックを駆使して、あらゆる角度から攻めてきてます。

「俺のテクニックどや!?」と言わんばかりに、メロディーの終わりに挿入される6連スラップ。「この色気はギターじゃだせんだろ!」と半ば挑発的とも思われる、スライドやグリスアップ&ダウンを駆使したメロディーライン。

普通なら2曲くらい聞けばお腹いっぱいになってしまいそうな、ディープなベースワールドなわけですが、何となく聞きとおせてしまうのは楽曲が良いから。以下にオススメ楽曲を載せておきますので参考にしてください。

My Favorite Songs

アルバムタイトル曲M3「Movin’」はアップテンポのゴキゲンなスムースジャズチューン。フルートが主旋律とユニゾンで使われていますが、メインはもちろんベース。ぷりっぷりなイイ音してます。曲中のソロパートも、もちろんベース。弦が切れんばかりのパーカッシブなフレーズの後には、素人ではもはや何をやっているのかわからないスラップの超絶プレイ。テクニック=表現力ということを痛感します。

M7「Te Quiero」は ギタリストEarl Klughをフィーチャーしたブリージンなスムースジャズチューン。リラックスした雰囲気の中、アル&アールのインタープレイが心地よい。

M10「Autumn Nights」はミドルテンポのスムースジャズ然とした楽曲。思わず口ずさんでしまうような解りやすいメロディーラインと、男性ボーカルによる軽いスキャットが印象的。曲の半ばにはサックスのソロもありますが、ここでもベースでユニゾンしている所に作者の意気込みを感じます。

さて、今回の作品はいかがでしたか?マニアックなアルバムではありますが、耳なじみの良いスムースジャズの良盤だと思います。またベースプレイヤーにとっては、お手本となるプレイが満載の教科書的作品だとも思いますね。このアルバムの主旋律をコピーするだけでもベースの腕前がかなり上がるのではないでしょうか。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。