アコギの神様がスムースジャズを演奏。Tommy Emmanuel / Can’t Get Enough

「アコギの神様」の異名を持つギタリストTommy Emmanuel(トミー・エマニュエル)。この人の演奏を始めて聞いたときは、誰もが度肝を抜かれたと思います。ベースライン・ハーモニー・メロディーを一人で奏で、時にアコギで超高速の早弾きをし、時にギターを打楽器のように打ち鳴らす。その姿はまるでギターとの格闘であり、”一人の人間が1本のギターでどこまで出来るか”という人間の限界への挑戦のように思えるほど。

そんな「アコギの神様」も、いまでこそソロギタリストとして認識されていますが、昔は、自らのバンドを率いフュージョン系の楽曲を演奏していた時代がありました。

本日ご紹介する「Can’t Get Enough」は、そんな時代の作品。ラリー・カールトン、チェット・アトキンス、ネーザン・イースト、ウォーレン・ヒルなど豪華ゲストを迎え、実に心地よいスムースジャズを演奏しております。

サウンドの主軸はもちろんトミーのギターに置かれていますが、バンド体制だからか、各パートを各々のメンバーに任せ、悠々とギターを弾いているようなリラックスした雰囲気がアルバム全編に漂っています。

特筆すべき点は、楽曲の良さ。トミー・エマニュエルと言えば、超人的なギタースキルばかり話題になりますが、作曲能力もすこぶる高いです。特に、楽曲に起承転結を持たせるのが抜群に上手く、曲中に雰囲気が大きく異なるパートを差し込みドラマチックな展開に仕立ててきますが、その展開のさせ方の自然なこと。聴くたびに思わず関心してしまいます。またメロディーメイクもうまく、覚えやすくもギターらしいメロディが次々と飛び出してきます。

アルバムタイトル曲「Can’t Get Enough」では早々に、(トミーの手癖かと思われる)お決まりフレーズが飛び出し思わずニヤリ。疾風のごとく軽やかなフレーズは心地よさ満点。ラリー・カールトンのギターソロもよい。「No More Goodbyes」は美しいメロディーラインをもつスローナンバー。サビでは、ウォーレン・ヒルのサックスがトミーのギターとユニゾンしていて美しい。

「Song For Nature」は開放感あふれるスパニッシュフレーバー漂うナンバー。ジョージ・ベンソン&アール・クルーの名曲「Brazilian Stomp」を彷彿させる「Midnight Drive」も良い。「Drivetime」は後にソロギターの楽曲として「Only」再録されており、ライブでも人気のナンバーとなっています。

本作はバンド体制の作品であり、スムースジャズなので、ソロギタリスト:トミー・エマニュエルが好きな方にはなかなか馴染みづらい作品であるかもしれません。しかし、本作で聴かれる楽曲展開やメロディーラインは、今の作品にも通ずるものがあり、トミー・エマニュエルのまた違った魅力に触れられる作品ではないかと思います。是非聴いてみてくださいね♪