ギターとスキャットが魅力。Joyce Cooling 「Keeping Cool」

Smooth Jazz
スポンサーリンク

前回Kilaueaのアルバムを紹介する際に、スムースジャズというジャンルの特徴について、さらっと触れました。その時「スムースジャズはバンドスタイルのアーティストが少なく、ソロイストが多い。それみろスムースジャズのアルバムジャケットなんてみんな独りぼっちだぞ」という趣旨の話をしました。

そしてこのジャンルのもう一つの特徴は、他のジャンルに比べ、女性ソロイストが多いこと。

そんな女性進出が活発なジャンルにおいて、草分け的存在が今回紹介するJoyce Cooling(ジョイス・クーリング)です。本日は彼女が1999年にリリースした作品をご紹介いたします。

今回紹介する作品はスムースジャズギタリストJoyce Coolingが1999年にリリースしたアルバム「Keeping Cool」。レビューに入る前に、少しジョイス自身のことに触れておきましょうか。

スポンサーリンク

■ジョイス・クーリングについて

Joyce Coolingは1969年アメリカニュージャージー出身のスムースジャズギタリスト。両親は共に教師という「教師一家」に生まれた彼女。音楽教師をしていた母親の影響もあり、幼いころからとにかく音楽好きだったそうです。

彼女がギターを手にする切っ掛けとなったのが、ジャズギタリストWes Montgomeryの名曲「What’s New」。ウェスの演奏に感銘を受けた彼女は、ギターを独学で学んでいったそうです。今でいう耳コピですね。

80年代初頭にカリフォルニアへ移住すると、ガーナ人パーカション奏者CK Ladzkpoのドラムスクールを受講。そこで西アフリカの伝統音楽に傾倒します。これが、後の彼女の音楽性を決定づけることとなりました。ジョイス・クーリングのサウンドの特徴の1つに、パーカッシブなメロディーラインがありますが、これは西アフリカの音楽からインスパイアされたものだったのですね。

その後、私公上のパートナーJay Wagner(キーボード奏者)と出会い、インディーズレーベルでアルバムを2枚リリースした後、1997年にアルバム「Playing It Cool」でメジャーデビュー。現在までに10枚の作品をリリースしています。

■Keeping Coolの収録曲

 1.  Callie
 2.  Want To Coast? (Intro To Coasting)
 3.  Coasting
 4.  Ain’t Life Grand?
 5.  Out Of A Movie 
 6.  Before Dawn 
 7.  China Basin
 8.  Simple Kind Of Love 
 9.  Little Five Points 
10. Gliding By

■Keeping Coolの感想

今回取り上げた「Keeping Cool」は1999年リリースのセカンドアルバム。前作「Playing It Cool」の流れを引き継いだ作品です。

一曲目「Callie」の大胆なクラブ系のビートに驚かされますが、全体的にシンプルな構成とアレンジメントの楽曲が多く、マットな質感のクールさを感じます。かといって無機質な色彩を欠いた雰囲気を感じさせないのは、ジョイス自身のギターとスキャット(歌詞の無いボーカル)のおかげですね。

ジョイスのギターの特徴は、カントリーなどの音楽で使われるギターつまり、テレキャスター(比較的硬い音がします)をピックを使わず指で演奏するスタイル。これは当然ウェスからの影響でしょうが、柔らかく、繊細でハートウォーミンな音色がクールな曲調とよい対比となりサウンドのバランスを保っています。

そして、その繊細なギターとユニゾンで歌われるスキャット。これがもうサイコーなのです。透明感のある美声ながら、何となく陰りがある魅力的な歌声です。そんな、ギターとスキャットを聞かせるために、(あえて)楽器構成をシンプルにし、サウンドに隙間を多くもたせているのでしょう。

楽曲の大まかな流れは、西アフリカの影響を感じるパーカッシブなフレーズが4回ほど繰り返され、バース2に。バース2はペンタ的なガイドフレーズから大きな譜割りのメロディーに。その後バース1に戻り先ほどと同じフレーズをスキャット付きで。そしてソロ・・・・なんて感じで展開していきます。

ミディアムテンポの楽曲が多いですが、タイトなリズムと、パーカッシブなメロディー、クロマチックを多用した西海岸系のソロなどにより、ドライブなどのシチュエーションによく合う作品だと思います。

■Pickup Songs

二曲目のイントロからなだれ込むように始まるM3「Coasting」は西海岸のベイエリアを彷彿させるスピーディーなドライブチューン。オクターブ奏法で演奏されるメロディーラインが印象的で、リラックスした雰囲気の中にスムースジャズ的な高揚感を感じます。エンディングソロは、短いながらもスキャットとのユニゾンで、よく纏まっています。

M8の「Simple Kind Of Love」は軽やかにグルーブする、歌物のナンバー。ここでも、短いセンテンスで作られているメロディーラインが耳に残ります。80年代のブラックコンテンポラリーを彷彿させるサウンドかな。

さて、いかがでしたか?このアルバムは家で聴くというより、外に持ち出して聴くのに適した作品だと思います。これからどんどん暖かくなる春先のドライブにいかがでしょうか。

 

コメント