スムースジャズの金字塔 Brian Culbertson / It’s On Tonight

夜を感じさせる都会的なサウンド、美しいピアノの旋律とディープなR&Bのリズム。今回紹介するのはスムースジャズピアニスト、Brian Culbertsonが2005年にリリースしたアルバム「It’s On Tonight」です。

Brian Culbertsonは1994年に若干21歳でデビューしたサウンドクリエーター。ピアニストとして自身の作品をリリースする傍ら、他のミュージシャンへの楽曲提供やプロディースを行うなど現在ではスムースジャズを代表するアーティストの一人となっています。

作品における作風の変化を大雑把ながら説明しておくと、1990年代はフュージョンタッチの作風から徐々にR&Bを基調とした作風への過渡期、2000年代前半はスムースジャズのアーティストとしての円熟期、2000年後半からはファンクやソウルを積極的に取り入れたゴージャスな作風に変化し現在に至るという感じ。2020年4月には通算20枚目のアルバム「XX」をリリースするなど、破竹の勢いはまだまだ留まるところを知りません。

ダークでモダンなアルバムジャケットから想像できるように、真夜中のカクテルタイム向けの作品。全曲ミドル~スローテンポで構成されており、リズムは深く濃厚なR&Bスタイル。メイソン&ハムリン社のBBグランドピアノよるサウンドは、ふくよかなサスティーンが特徴的で何処までも美しい。サウンドのスパイスとなっているのは管楽器類。ボニー・ジェームス、クリス・ボッティ、カーク・ウェイラム等の一流アーティストがサウンドに華やかなムードと高揚感を与えています。

そしてなりより、特筆すべき点はメロディーラインの秀逸さ。タメや間を活かしたフレーズが特徴的で人間の発声に近いメロディーが多く、思わず口ずさんでしまうような覚えやすいものばかり。スムースジャズにおいてメロディーとは「単に美しいだけ」では十分でなく「どれだけフックがあるか」が重要となることが分かる好例ですね。

全12曲中、3曲が歌物の楽曲。アルバムタイトル曲である3曲目「It’s On Tonight」では、Will Downingが艶のあるジェントルボイスを披露しています。ただし3曲とも半歌物という感じで、メインはあくまでブライアンのピアノサウンド。要所要所でキザに思えるほど都会的でラグジュアリーな質感のピアノを思う存分楽しめる作品となっています。

リリースより15年が経過しましたが、洗練されたサウンドは未だに色褪せません。深夜のリラックスタイムに、はたまた家族や恋人との楽しいひと時に、そっと流しておきたくなる名盤。スムースジャズファンなら是非手に入れておきたいマストアイテムでしょう。