今年デビュー45周年を迎えるスムースジャズピアニストDavid Benoit(デイヴィッド・ベノワ)が1999年にリリースした「Professional Dreamer」。彼の黄金期であったGRPレーベル所属期のラストアルバムとなります。
GRP期のベノアと言えば、1987年の「Freedom at Midnight」や1988年の「Every Step of the Way」で披露していた、リリカルで華麗なピアノによる西海岸スタイルのフュージョンを基調に、ストリングス等の装飾音をふんだんに使いドラマチックに仕立てたサウンドがトレードマークですが、本作は趣が大きく異なっています。
アルバム全編を通して”真夜中”の雰囲気なんですね。ダークでミステリアスな雰囲気が立ち込める中、ベノアの叙情的なピアノがサウンドにエレガンスを加えていて、バータイムに似合いそうなお洒落な作品となっています。
楽器構成は、基本ドラム、ベース、ギター、ピアノの4種。また、本作はトランぺッターのリック・ブラウンがプロデューサーを務めているので、楽曲によってはリック本人によるトランぺットがフィーチャーされていますが、トランぺット以外の管楽器は作中ほとんど登場しません。
オーソドックスな楽器構成であり、以前の作品と比べると鳴っている音色は少ないですが、曲中でアコーステックピアノとハモンドオルガン、フェンダーローズと鍵盤楽器の弾き分けを行っている為、物足りない印象はありません。
本作のサウンドを音楽ジャンル的に分類すると、ベノアの作品の中でも「スムースジャズ」らしい作品に属すると思います。その理由としては、まずリズムのグルーブがR&Bやヒップホップのような横揺れとなったこと。劇的なアレンジメントや編曲が無くなり、平面的な曲展開となった事が挙げられます。
“ホットからクール”に”パッションからチル”に”ドライブからグルーブ”にサウンドのベクトルが変わっているので、リリース時には賛否両論あったかと思いますが、個人的に好きな音が出てきたという感じ。心なしか、ベノアのピアノの音数も少なくなり、間が強調されているような気がします。
1曲目「Why Not!」は、どっしりとしたグルーブと、アコーステックピアノ&ハモンドオルガンの弾き分けによる対比が面白い楽曲。アコーステックピアノが奏でるジャジーなフレーズに痺れます。
2曲目「Miles After Dark」はリック・ブラウンのトランぺットをフィーチャーした楽曲で、妖艶な雰囲気漂うナンバー。シンプルなメロディーの曲ながらムード満点。お酒に合いそうな感じです。(禁酒中だけど)
4曲目「ReJoyce」は今作のハイライト。スムースジャズ系のラジオステーションでヘビロテされていたされていた楽曲です。曲の良さもさることながら、ベノアのピアノの音色の美しいこと。特にピアノソロでの音の広がりには息をのみます。よく冷えたカクテルのような楽曲。
9曲目「Twilight March」はアルバムの中で異色のナンバーで、シャカタクにクラブサウンドを混ぜたような感じ。曲自体は悪くないのですが、ベノアらしさは無いです。
アルバムを締めくくる10曲目「Dad’s Room」は、アコーステックピアノとオーケストラによるドラマチックなナンバー。感動系映画のエンディングテーマのような扇情的なメロディーラインが物悲しくも、温かさを感じさせます。グラミー賞ノミネート作品。
コメント