アメリカ、ウエストコースト発のスムースジャズバンドKilauea。バンドリーダーで現在はハワイアンミュージックの第一人者として活躍中のDaniel Hoが率いる彼らのサウンドは、L.Aフュージョンとスムースジャズのハイブリットと言える魅力にあふれたものでした。
活動期間こそ約6年間と短命なバンドでしたが、彼らの残したサウンドは今でも多くのスムースジャズファンに愛され続けています。
デビューアルバム「Antigua Blue」
今回紹介するアルバムは、彼らのデビュー作「Antigua Blue」。1991年にリリースされた本作はPOPテイスト溢れるL.Aフュージョンの快作です。デビューアルバムながらタイトでカチッとしたバンドサウンドが聴ける本作ですが、この作品にはちょっとしたヒミツがあるのです。
収録曲すべてが外部から提供された楽曲。提供主は・・?
上の試聴ファイルをお聞きください。スムースジャズファンであれば何となくピンとくるものがあるのではないでしょうか?
ポップなテイストの楽曲、ヴィヴィドな音使い、そして滑らかなメロディーライン。まるでウエストコーストの空気をそのままパックしたようなフレッシュサウンド。そう。同じく西海岸のスムースジャズバンド、ザ・リッピントンズにそっくりなのです。
それもそのはず、本作に収録されている楽曲はすべてザ・リッピントンズのリーダーRuss Freeman(ラス・フリーマン)によって書かれたものなのですね♪
リッピントンズ、アルバム未収録曲集
実は、このアルバムはラス・フリーマンがリッピントンズ用に書き下ろした楽曲のうち、アルバム未収録曲を集めたものだったんですね。
演奏こそキラウエアのメンバーが行っていますが、リッピントンズのメンバーもゲストとしてレコーディングに参加していますし
楽曲を聴くかぎり、キラウエアとしてのカラーを打ち出している感じもしませんので、本作は「リッピントンズの幻の作品」といって過言ではないでしょう。
本作がリリースされた1991年頃と言えば、ちょうどリッピントンズの全盛期で、ドライブ感溢れるL.Aスタイルのフュージョンをやっていた頃。あの頃のサウンドを愛するリッピントンズ・ファンにとっては堪らない作品でしょう。
「ツーリスト・イン・パラダイス」も聴いた「ウィークエンド・イン・モナコ」も聴いた。「セント・ジェームズ・クラブ」も「キリマンジャロ」も聴いた。
ラスのソロアルバムである「ノクターナル・プレイグランド」だって「ホリディ」だって聴いた。でも、「サハラ」以降のアルバムにはイマイチ魅力を感じない…。そんな、L.Aフュージョン時代のリッピントンズを愛する者にとって、本作はあの時代の音色と作風に溢れた「最後の楽園」と言うべき作品なのです。
まとめ
懐かしい往年のリッピントンズサウンドが聞けるというわけで、キラウエアの作品ながらリッピントンズの話題ばかりになってしまいました(笑)
キラウエアについても少し触れておきますと、このデビューアルバム時点では独自のサウンドを構築しているとは言えないものの、この後、凄まじいスピードで自身の音楽性を確立していきます。
97年の解散までの短い間にスムースジャズチャートNo.1を2曲送り出し、ベストセーリング賞を受賞。リーダーのダニエル・ホーは解散後ソロに転身し、グラミー賞ウィナーに数回輝いています。最近ではB’zの松本さんとコラボしたり、ウクレレの教則本を出版したりとマルチに活躍しているようです。
本作でラスが全曲楽曲提供を行うほどバックアップしたのは、ダニエルの才能を見抜いていたからかもしれませんネ。
この作品は現在、廃盤になっているようですが、アマゾン、itunesではデジタル形式で入手可能なので、興味のある方は是非チェックしてみて下さい。
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