今はもう辞めましたが、関西のとあるスーパーで店長をしていた時期がありました。
スーパーマーケットは、食材・日用品などの生活必需品を買いに不特定多数のお客様が来店される場所。それ故、いろいろなドラマが日々繰り広げられます。
わたしがスーパーの従業員として従事していたのは、店長期間を含め約10年ほどですが、今でも鮮明に記憶に残る出来事が多く、たまに思い返してはホッコリした気持ちになったり、悔しさ蘇ったりします。
多くの人との出会いと、それに伴い次々と起こる出来事。それがスーパーで働くことの醍醐味の一つであると私は思います。
本日は、そんなスーパー勤務時代に遭遇した、困ったお客様とそれに纏わる出来事の一部を備忘録として書いていきます。
まず、困ったお客様を2パターンに分けてご紹介いたします。
■業務に多少の支障をきたすが、店側に与える被害は少ない人たち
従業員を捕まえては、延々と長話をしてくるお客様は少なからずいらっしゃいます。大抵は身の上話なのですが、この「二頭筋おじさん」は違いました。
まず、話かけてくる場所が決まっていて、牛乳の陳列棚前、総菜の唐揚げ前、鶏肉コーナ前。大概この3箇所に長時間滞在し、店員が来るのをジッと待ちます。
店員が現れると「あのぅ~」と切り出し、「き、きんにくに効く食べ物は何ですか~?」と言いながら自らの二頭筋を擦り出します。(スリスリ)
続けて「昨日、筋トレをしたら腕が痛くてぇ~タンパク質を採ろうと思うのですが、コレ(牛乳・唐揚げ・鶏肉)は筋肉に良いですか?」と商品を指さしながら聞いてきます。
これは質問ではなく、店員を話に引き込むための釣り針であり、店員が話に乗ったら最後。超回復など筋肉にまつわる話を、嬉々として語り出します。
こんな話を、人を変え場所を変え続けるので、捕まっている店員を発見次第、店内放送でその店員を呼びつけることで、強制的に切り上げさせていました(笑)
※ちなみに、二頭筋おじさんはガリガリのモヤシ体系です。
わたしの勤めていたスーパーでは、一定の時間帯になると、売れ残っている生鮮食品・総菜等に「3割引」「半額」と書かれた値引きシールを貼り、値引きを行っていました。常連さんとなれば、値引きのタイミングを熟知しているので、それ目当てに来店される方も多くいました。
その中でも、特に記憶に残っているのが、商品キープおばさん。
最初の頃の「商品キープおばさん」は、目ぼしい商品を見つけると「これ、値引きならんの?」と聞いてくる程度でしたが
次第に値引作業の1時間前から希望の商品の前でスタンバイしておくように。お弁当や、お寿司コーナーの前で、しゃがみ込んでいる丸い背中が今でも脳裏に浮かんできます。
値引き商品を買う機会は、すべてのお客様に等しくあるべきなので、しゃがみ込みを止めて頂きたいと間接的に何度かお願いを致しました。
すると今度は、目当ての商品をあらかじめ買物カゴに入れキープするようになりました。値引きが始まれば、作業中の店員に買物カゴごと差出し、値引きを要求してくる始末。
取り置き禁止の張り紙を掲示したり、対策を講じましたが効果は無く、私がその店舗を移動になるまで、続けておられました。
商品スキャン前に「ポイントカードはお持ちですか?」とお伺いするも返答なし。にも関わらず、会計後に「ポイントつけてや」と舞い戻ってくるお客様。
ポイント後付け付与が出来ない旨の張り紙の掲示も行っていましたし、後のお客様の迷惑にもなるので、丁寧にお断りすると
「〇〇スーパーではしてくれたのに!」
「ほんと、融通きかんな!」
「だから足遠のくんや!」と言いたい放題。
しまいには「ポイントカードを持っているか聞かれていない!」「あると言ったがレジ員に無視された!」等々。・・・こういうお客様、案外いらっしゃいます。
これは、迷惑行為や犯罪行為に該当すると思いますが、中にはついうっかり置いて行ってしまったケースもあるので、こちらに分類。
食品棚の奥からネギ1本が出てきたり、お弁当コーナーに牛肉が置かれていたり。
適切な温度管理がされていない状態で、どのくらいの時間が経過しているのか、判断がつかない場合もあるので、こういった商品は基本廃棄です。(泣)
あと、意外なケースとしては、例えば、冷凍餃子や冷凍むきエビをアイスの陳列ケースに放置するなどの、商品はダメにならないが本来の場所に戻さないパターン。
戻しに行くのが面倒くさい気持ちも分かりますが、出来れば元の位置に戻して頂きたい。
■業務に多大な支障をきたし、且つ店側に甚大な被害を与える人たち
ここからは、万引きや窃盗などの法律に抵触する行為をしたお客様の例です。
私がまだスーパーで勤務を始めたばかりの頃でした。午前中の来店ピークを過ぎ、店が1日の中で一番暇になる14時頃。
その時間帯は人件費削減の為にレジスタッフを少なくしたり、レジスタッフに前だし(陳列棚の整頓)をお願いしたりします。
稀に、お客様の会計のタイミングが重なりレジ待ちが発生することがありますが、この出来事に遭遇したのは、そんな時でした。
歳は30台中盤あたり。上下スーツ姿の身なりの良いOLさん。栄養ドリンクとその他数点を抱えレジ待ちをしていました。
すると突然。会計前の栄養ドリンクの蓋を開け、飲み始めたではないですか。
あっという間に飲み干すと、空の容器でお会計。
まるで、そうするのが当然かのように堂々と悪びれることも、周りの目を気にする素振りもありません。後でお金を払うのであれば、何をしても良いと思っているのでしょうか。
私が調べたところによると、この行為は窃盗にあたるようです。刑法上の窃盗の定義は「他人の意に反して、他人の財物を自己の支配下に置く」ことらしく、飲み干す=胃袋に収める行為も「自己の支配下に置く」ことに該当すると解釈され、窃盗罪が成立するようです。
突然の光景に唖然なり、文句を言いに行くことすら出来なかった、当時の自分を思い返すと情けなくなります。
ある日、店内で品出しをしていると、お客様からのタレコミが。
「白いジャンパーのお爺ちゃんが商品をポケットに入れてた」とのこと。
その人物を見つけ尾行していると、陳列されている柿をズボンのポケットに入れるところを目撃。そのままレジを通過せず退店したところで、声をかけました。
会社の方針として、万引きを捕まえた場合は、例外なく警察に連絡する規則になってましたので、私は、万引き犯を狭い会議室に連れていきましたが、応援が来ないので、警察への通報をお願いする為、席を外しました。会議室に戻るまで20秒ほどだったと思いますが、眼を離したのが間違いでした。
会議室に戻ると、おじいさんが座っている席より、少し離れた位置にある椅子に、何故かキウイが二つ置いてあります。違和感を覚え問いただすと
「柿は盗ったが、キウイは違う」「そこに置いてあった」と。
そんな訳はありません。滅多に使わない部屋なのですから。私が問い詰めても知らぬの一転張りでしたが、到着した警察官に改めて問われると、キウイも自分が盗ったものであると、あっさり認めました。
盗んだ品数が少なければ、罪が軽くなると思ったのでしょうか。
ちなみに、このおじいさんには、今後来店しない旨の誓約書を書いてもらい、帰っていただきましたが、二ヵ月も立たない間に店内で見かけた為注意をすると、仰天発言が返ってきました。
「時間もたったし、もう、来ても良いと思った。」
それは、あなたが決める事ではない!
売り出し日の夕方、来店者数はピークを迎え、レジ1台につき5名ほどレジ待ちが発生していました。そのおばさんもレジに並んでいて、次が会計というタイミング。
その時、会計をしていたのは老齢のお客様で、小銭を出すのに手間取っていました。対応していたレジスタッフ(女子高生)は「ゆっくりで大丈夫です」「手伝いましょうか」と、お客様を焦らせないように、穏やかに話をしていました。
すると突然、後ろに並んでいたおばさんが、「なにもたもたしてんねん!はよせぇや!」と怒鳴り出し、老人をカゴで小突きました。(この時点でアウト!)
その後、老人の会計が終わり、自分の番になっても怒りは収ることなく、怒りの矛先はレジ員に向けられます。
おばさん「どんだけ待たせるんや!」
レジ員 「・・・はい、申し訳ございません。」
おばさん「おい、聞いてるんか」
レジ員 「・・・大変申し訳ございません。」
おばさん「申し訳ございませんしか言えないのか!」
レジ員 「は、はい、申し訳ございませんでした。」
その瞬間、おばさんは空のカゴをレジ員に向けて投げつけました。
幸いレジスタッフに怪我はありませんでしたがショックで涙が止まらず、控室に来たところで、私に一部始終を話してくれました。その為、上記のやり取りは、レジに設置されているカメラで確認したものとなります。
常連の方でしたので、翌日来店したところで声かけ。警察にも来ていただきました。被害にあったレジスタッフから被害届を出さない旨を聞いていたので、今後来店しない旨の誓約書を、警察官の前で書いてもらい終わりにしました。
この件については、レジスタッフに落ち度は無いものの、紋切り型応対がお客さんの怒りを加速させたのだと思います。クレーム処理や厄介なお客様の応対は、社員に任せる事になっていたので、現場でのリスクヘッジが不十分だったと後に反省しました。
スーパーに訪れる迷惑なお客様特集、いかがだったでしょうか?スーパー勤務の方であれば同じような場面に遭遇したことがあるのではないでしょうか。スーパー業界を離れ早2年。辞めた今、当時を思い返すと、毎日何かしらの出来事があり、濃い時間を過ごしていた思います。
労働環境で経営陣と揉めたり、従業員の不祥事やイジメ等の問題もあり骨の折れる日々でしたが、お客様や他の従業員とする何気ない会話や、活気に満ちた店の雰囲気が好きだった私にとって、スーパーマーケット業界はイキイキと働ける場所だったと思います。
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