色が認識される経路
物体から反射された光が眼にはいる ⇒ 網膜で像として結ばれる⇒
視細胞で人間の内部で使える信号に変換 ⇒ 視神経を経由し ⇒
大脳の視覚中枢で色や形として認識(知覚)
眼の構造
【眼球】・・・直径約24mmの球状で3層の膜からできている
●外側の膜
1.強膜:厚さ1mmの硬い保護膜
2.角膜:前方にある眼球の1/6を覆う無色透明な部分
●中間の膜
1.脈絡膜:血管が多く、眼に栄養を補給している
2.毛様体:水晶体の厚みを調整する
3.虹彩 :瞳孔の大きさを変化させ、眼球内に入る光の量を調整(カメラの絞りに相当)
●内側の膜
1.網膜 :カメラのフィルムに相当。視神経細胞(視細胞)があり光を体内で使える電気信号に変換する
●3層の膜につつまれた内部
1.水晶体:網膜上の中心窩に像を結ぶ、遠くを見るときは薄くなり、近くをみるときは厚くなる。
2.硝子体:水晶体の後ろにあるゼリー状の物質
3.眼房水:前眼房と後眼房を満たす液体で、水晶体や角膜に栄養を補給
■One Point■
眼に栄養を補給する = 脈絡膜
水晶体や角膜に栄養を補給する = 眼房水
杆状体と錐状体
網膜にある視細胞は杆状体と錐状体にわけられます
■杆状体
明暗の感覚だけに関与 分光感度は507nmあたりにピークがある
■錐状体
三種類の錐状体の興奮のしかたの違いで色を識別
S錐状体(青錐状体):主に短波長に反応
M錐状体(緑錐状体):主に中波長に反応
L錐状体(赤錐状体):主に長波長に反応
【中心窩】
網膜中央部のくぼんだ部分。錐状体しか存在せず、視覚がもっとも敏感な部分。ここに眼で見たものの像が結ばれる
【黄斑】
中心窩を中心に直径約2mmの黄色い色素を持つ部分。短波長をカットするフィルタの役割をしており紫外線が網膜に到達するのを防いでいる。
網膜から脳への信号伝達経路
視細胞で変換された信号は水平細胞⇒双極細胞⇒アマクリン細胞を経て、神経節細胞で統合され、視神経繊維につながる。
【視神経乳頭】
視神経が眼からでる部分。視細胞が存在しないので盲点とよばれる。
視神経乳頭から脳に向かい、視交叉⇒外側膝状体⇒視放線を経て大脳の視覚野に伝えれ、色やその他の情報として処理される。
それぞれの目の網膜の左側の情報は脳の左半球、右側の情報は脳の右半球に伝えられる
加齢による色覚の変化と先天性色覚異常
■加齢による色覚の変化
年齢とともに水晶体の色素沈着が起こる。短波長の成分が色素に吸収されるので、青系の色が識別しづらくなる。色の識別能力は20歳代がもっとも高い。
■先天性色覚異常
異常がある錐状体の数によって分類される。
●色覚以上の検査方法
1.仮性同色表を用いた検査方法 - 石原視覚検査表
2.色光を用いた検査方法 - アマノスコープ
※一般的な色覚特性であっても区別しにくい配色には、明度差をつけたり、形などの手がかりをつけると区別しやすくなる。
感覚と知覚、視細胞と色感覚
【感覚と知覚】
色を識別する過程は感覚と知覚の2段階に分けられる。知覚は色が脳内にある記憶の情報と結合して決められる意識の段階。
【視細胞と色感覚】
■色順応:3種類の錐状体の感度変化と関係して起こる現象
眼が光の色に慣れて白く見えるようになること。
■明順応:明るさに慣れること
■暗順応:暗さになれること
杆状体がはたらく。安定するのに20分くらいかかる
■プルキニエ現象:薄暗がりのところでは青色系の色がみえやすくなる。
杆状体と錐状体の感度の違いが関係⇒杆状体:507nm付近 / 錐状体:555nm付近が最大感度。
色覚理論
■ニュートンの考え方
人間の眼の中にスペクトルを処理する多くの受容器があると考える
■ヤング-ヘルムホルツ説(三色説)
ヤング:ニュートンの考えに反し「光を処理するのは3種類の受容器」という説を唱える。
⇒50年後
ヘルムホルツ:各スペクトルに対し3種の受容器がどのように興奮するか示す。
■へリングの「反対色説」
三色説に対して、赤・青・緑・黄の四原色での色相環
赤と緑、青と黄、白と黒の三系列で成り立っており、片方の色信号が送られると、もう一方の色信号は抑制される性質を持つと考える = 興奮と抑制の過程で色が決まる(反対色説)
■段階説(現在の有力説)
視細胞レベルでは3色説、それ以降の視神経および脳内では反対説が成立しているという説
残像
物理的にはその光がないはずなのに、その色と関係したものが見える現象
※網膜の水平細胞から脳の外側膝状体までの過程におこる
■陽性残像
初めに見えたものと同じ明るさで同じ色相に見える残像 例:花火
■陰性残像
鮮やかな色を見た後で眼を明るい灰色に移したときに、元の色とは明るさも色相も逆に見える残像
色の対比と同化
■色の対比
背景色がテスト色に影響を及ぼすことで背景色との違いが強調されて見える現象
1.同時対比(空間的対比)
背景色とテスト色を同時に見たときに起こる対比
明度対比 ⇒ 背景色が明るい場合にはテスト色が暗く、背景色が暗い場合にはテスト色が明るく見える
色相対比 ⇒ 背景色の色相に影響を受け、テスト色から背景色の補色色相をうっすら感じる(色陰現象)
彩度対比 ⇒ 背景色の彩度が高いとテスト色の彩度が下がって感じられ、背景色の彩度が低いとテスト色の彩度が上がって感じられる
2.継時対比(時間的対比)
ある背景色を見た後に生じる陰性残像が作用して、次に見るテスト色の見えに変化が生じる、時間的な対比
◆対比現象の一般的な法則
【キルシュマンの法則】
●テスト色に対して背景色が大きいほど、対比は大きい
●背景色とテスト色が離れるほど、対比は生じにくくなる
●明るさの差が最小の時、有彩色の対比は最大になる
●有彩色のもつ明るさが一定なら、色がさえるほど対比は大きくなる
■色の同化
ある色が他の色に囲まれているとき、囲まれた色がそのまわりの色に近づいて見える現象
例:赤いネットに入ったミカンは赤く見える
面積効果
色彩学で大きさを定義するときは、網膜上に映し出された像の角度で表す=「視角」
視角が1度以下になると色相区分が曖昧になる。
【小面積第三色覚異常】
視角2分以下では、黄と青の色感度がなくなったように無彩色に見える
【大面積の効果】
視覚10度を超えてさらに色が大きくなると20度ぐらいまでは主に明るさと彩度が上昇して感じられる。緑と黄で特に顕著に起こる
色の恒常性
網膜上では変化しているが、同じように知覚される現象
●大きさの恒常性
例:あるものを近くから見ても遠くから見ても、そのもの自体の大きさが変化したとは思わない
●形の恒常性
例:正方形を斜めから見ても正方形と認識できる
●色の恒常性
例:ものを見るとき、照射する光の分光分布を変えても、物体の色自体が変化したとは知覚しない
視認性と誘目性
知覚的な色の目立ち具合を表す
■視認性
視認距離で表される。黒背景で、視認距離がもっとも長いのは黄色。有彩色同士の組み合わせでは、黄&紫がもっとも長く、青&青紫がもっとも短い(識別しずらい)
■誘目性
注意のひかれやすさ、印象の強さなどを表す。誘目性の高い色は黄・黄赤・赤。低い色は青紫。
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